昨今、子育て世代にも注目を集める平屋。なかでも他にはないセンスが光る「勾配天井」の平屋が人気です。
ところが、勾配天井の平屋を新築された方のなかには、
「夏、家の中が暑くて大変」
「平屋だから建築コストも抑えられると思ったのに……」
という方も……。
そこで今回は、平屋の勾配天井のメリットやデメリットのほか、勾配天井で後悔しないために押さえておくべきポイントを解説していきます。
勾配天井とは、屋根の勾配(傾斜)や形状に合わせてつくる勾配(傾斜)をつけた天井のことをいいます。
屋根裏を設けないので天井高が高く、縦の抜け感が開放感とおしゃれな雰囲気を空間にもたらします。
戸建ての天井高は一般的な構造で2.2~2.4mが標準とされていますが、勾配天井では最大4m以上の高さを出すことができます。
勾配天井の平屋には、主にこのようなメリットがあります。
平屋に「ゆとり」を感じさせる空間設計として、勾配天井はひとつの方法です。
勾配天井を取り入れると高さと抜け感が生まれ、気持ちのよい開放感に満ちた空間になります。
さらに、勾配天井に渡した梁にシーリングファンなどを設置すればラグジュアリー感がもたらされ、空気を循環させる機能性も向上し、より快適な空間に仕上げることができます。
周囲に住宅が立ち並ぶ土地に平屋を建築する場合、どのように採光性を高めるか、が問題になります。
そこで、平屋の採光性を高める方法として天窓の設置が多く採用されますが、勾配天井ならば天窓のほか「高窓」という選択肢も可能になります。
高窓は天井面に近い壁面に取り付けられる窓のことで、周囲の環境に影響を受けることなく自然光をたっぷりと取り込むことができます。
勾配天井は窓の開口面積を広く取れるので、日中は照明いらずの明るい光が降り注ぎます。
当然のことですが、平屋の床面積は2階建てに比べておよそ半分しか得られません。
勾配天井の平屋の場合、「ロフト」がつくりやすい天井の形状なのでその分、居住スペースや収納スペースとして広げることができます。
ロフトを設置するには「小屋裏収納」「ロフト風空間」の2つの方法があります。
ちなみに小屋裏収納にする場合は建築基準法などの規制がありますが、固定資産税を抑えることができます。一方、ロフト風空間には規制はなく自由な空間をつくることができますが、固定資産税が課税されることに注意しましょう。
勾配天井の平屋は、その構造ならではのデメリットがあります。
暮らし始めてから後悔しないように、デメリットを知っておくことも大切です。
勾配天井の建物は、屋根の棟が高くなり傾斜角が大きくなるほど、室内空間が拡がります。
しかし、その分、メンテナンスも難しくなってしまいます。
たとえば天井の高い場所に設置した照明器具の掃除や電球などの取り換えは、脚立などを使用しなければ行えない大仕事です。
また、照明器具が故障して器具ごと取り換える場合は足場を組む必要も出てきます。
そうなると足場の設置費用もかかり、メンテナンスは後回し……ということになりがちです。
勾配天井は一般的な天井に比べ、施工費や材料費が割高になる傾向があります。
そして壁や天井の面積が増すため、内装工事に関わるコストもかかります。
また、採光性や風通しを良くするために窓を設置する場合は窓の取り付け費用に加え、シーリングファンなどの費用もかかることになります。
どうしても勾配天井にしたいけれどできるだけコストを抑えたい場合には、設計士や工務店とよく相談してコストを抑える工夫に取り組むことをおすすめします。
勾配天井の平屋は一般的な平屋よりも冷暖房効率が下がる傾向がみられます。
特に冬の時季は、暖められた空気が天井付近へ上ってしまうため、いくら暖房で暖めてもなかなか部屋の温度が上がらず、光熱費がかかってしまいがちなんです。
ここまで、勾配天井の平屋のメリットとデメリットについて解説してきました。
それを基に、快適に過ごすために必ず押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
勾配天井は構造上、通常は天井裏に設ける換気経路が確保しにくいうえ、断熱材の設置スペースもないことから、特に夏場の室温上昇と内部結露が発生しやすいといえます。
できるだけ室温上昇と内部結露を防ぐためには、屋根材に遮熱性と反射率の高い素材を採用するほか、結露を防ぐ確実な施工が欠かせません。
また、日の当たらない位置に天窓を設置して換気を行えるようにしたり、シーリングファンを設置して空気の循環を良くするといった対策も選択肢のひとつに挙げられます。
勾配天井の平屋は天井が高い分、建物上部と床面との温度差が大きくなります。
特に冬の時季は暖房器具で暖められた空気が天井付近に昇るので、足元が冷えやすいという状態になりやすく、暖房効率もよくありません。
このように温度差が大きな状態を避けるためには、そもそも高断熱・高気密な建物にし、家の中の空気を循環させる工夫(間取り、シーリングファンの設置など)のほか、床下暖房・エアコンといった低い位置からの冷暖房システムの導入をはかるとよいでしょう。
天井高のある勾配天井の家では、照明選びと設置場所をしっかり計画しておきましょう。
一般的な照明では斜めの天井に取り付けられないことがあります。そのため、あらかじめ照明の形状や電球の種類について調べておくことがおすすめ。
勾配天井でよく採用される照明は、ダウンライト、シーリングファンライト、ペンダントライトなどを梁や壁に取り付けます。
天井に取り付けるシーリングライトは勾配天井では十分な明るさを確保できない場合もあるので、避けたほうが無難です。
コンパクトな平屋でも、天井を高くとる「勾配天井」を取り入れることで広々とした開放的な空間を作り出すことが可能です。
オシャレで高級感あふれるデザイン性や室内への採光性も高まる一方で、コストアップやメンテナンスの難しさ、冷暖房効率の低下といったデメリットもあります。
今回紹介したデメリットを解消する「押さえるべき3つのポイント」を実践しながら、センスが光る、かつ快適な勾配天井の平屋をぜひ作り上げてくださいね。